相続税申告の業務を行っていると必ず土地の固定資産税評価額も調査します。特に主要幹線道路に面している土地で「騒音減額」を考慮していたり、「がけ地減額」を適用していたりしていることが確認できます。
通常、相続税の路線価は公示価格の80%水準に、固定資産税の路線価は公示価格の70%水準に設定されているため、相続税の評価額は固定資産税の評価額のおおよそ1.15倍(80%÷70%)になります。
しかし、相続税の評価額を計算してみると固定資産税の評価額が断然に高い土地があります。今回の相続税申告でも相続税の評価額と固定資産税の評価額の比が約100倍という土地がありました。過去には私道で公衆道路として使用している土地が宅地として評価、課税されていたこともありました。
固定資産税の評価額に誤りがあるため、区役所に掛け合い、評価額の是正を求めるととともに、これまで過大に納付してきた固定資産税の還付を請求しました。還付請求はすんなりとは受理されず、役所の担当者は、「固定資産税の閲覧制度、縦覧制度」があり、その手続きを経て評価額は決定しており、納税者も了承のもとであるため、今後の評価額は是正するが、過去にさかのぼっての還付請求は受理できないというのがよくある回答です。
そもそも固定資産税の閲覧制度、縦覧制度とはいったい何なのか?
================= 閲覧制度 ==================
ご自身の固定資産(土地・家屋・償却資産)について、固定資産課税台帳に記載された事項(価格や課税標準額等)を固定資産課税台帳の閲覧により確認できる制度です。一年中、申請が可能です。
================= 縦覧制度 ==================
縦覧とは、土地及び家屋について、所有されている資産の価格と区内にある他の資産の価格とを比較し、ご本人の資産に対する評価が適正かどうかを縦覧帳簿で確認できる制度です。期間は4月1日から4月20日またはその年度の最初の納期限の日までです。
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上記のような手続きで納税者自身で評価額の妥当性を判断できるのだから、これまで評価額が誤りであることを主張しなかったので、過去分の評価額は是正できず、過去分の固定資産税の還付はできないというのが課税する区役所側の主張です。
しかし、この主張は間違っています。固定資産税は、そもそも市町村長が評価額、税額を計算し、決定するという賦課課税方式の税金であり、そのプロセスにおいて納税者の閲覧、縦覧によって評価額、税額が決定するという手続きになっていません。閲覧、縦覧は、賦課課税方式の税金であるが故に納税者に情報開示することが求められており、その「情報開示」の手続きに過ぎません。
このような理論構成で主張すると過大に納付した過去分の固定資産税・都市計画税も還付されます。
次の問題は、過去の「何年分」が還付されるのかという点です。地方税の時効は「5年」ですので、過去5年分は無条件で還付されます。
しかし、5年以上前の分は地方税法では時効により還付することができません。ここからは各地方団体で取扱いが異なってきます。
横浜市の場合は、5年を超えた部分の還付に対しては、市で要綱を制定しており、原則として固定資産課税台帳の保存年限(10年)の範囲内であれば還付することとしており、納税者が領収書等によりそれ以上の期間分を証明できるのであればこれも認めることとしています。時効にならない部分は税金の過誤納金として還付処理され、時効を超えた部分の期間については過誤納金補填金として還付処理されます。
先日、横浜市にこの要綱を請求し、入手しました。横浜市の条例検索データベースにも登録されていない資料です。
納税者が証明できれば20年分でも還付請求でき、還付金額は何百万円にもなることがあります。課税する側も納税する側も正しい課税、正しい納税をすることが必要だと思います。今回は、納税者が証明できる過去15年分の還付申請を行います。