相続税評価額を計算する場合、土地・建物について他人に賃貸していると評価額が下がります。
●貸家の評価額=固定資産税評価額-固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合
●貸家建付地の評価額=自用地としての評価額-自用地としての評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
たとえば、
(例)建物の固定資産税評価額1,000、借家権割合30%、賃貸割合100%
貸家の評価額=1,000-1,000×30%×100%
=700
(例)土地の自用地としての評価額1,000、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%
貸家建付地の評価額=1,000-1,000×60%×30%×100%
=820
となります。
また、「賃貸割合」は、下記の算式で計算します。
賃貸割合=(A)のうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
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「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。
また、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、例えば、次のような事実関係から、アパート等の各独立部分の一部が課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において一時的に空室となっていたに過ぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして差し支えありません。
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
(3)空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
(4)課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。
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借地権割合や借家権割合は課税時期に関わらず決まった割合ですが、賃貸割合は課税時期において「賃貸中」なのか「空室」かで割合が変化してしまいます。
- 相続開始時にたまたま空室となっている場合で、入居者が決まるまでに国税庁の質疑応答事例の空室期間が課税時期の前後の「1ヵ月程度」を超えるときは、空室として賃貸割合が下がってしまうのでしょうか。
-
賃貸割合を計算する場合において、課税時期においてたまたま空室であったものは、現に賃貸中ではありませんが、一時的には空室ということで賃貸中であるものと同様に賃貸割合の分子に算入することが認められています。
また、「一時的に空室」かどうかの判断基準ですが、国税庁の質疑応答事例では課税時期の前後の「1ヵ月程度」に入居者が入るかどうかを例示していますが、実務上は、1ヵ月を超えて空室となっていても入居者の募集状況、修繕・原状回復の状況等を考慮して「一時的な空室」として取扱い、評価減を適用して税務申告しています。
しかし、最近では空室のものについて、「一時的な空室」とは認められないとして、評価減を否認する判決等が増えています。
●平成26年4月18日国税不服審判所裁決
相続開始日前後の空室期間は最短のものでも4ヵ月を超える期間に及んでおりり、また、相続開始日の数日後に賃貸借契約が締結されているものの、本件相続開始日時点で既に7ヵ月以上空室であったのであり、結局、その空室期間は約8ヵ月に及んでいる部屋もある。このような空室期間等の賃貸の状況に照らしてみれば、請求人らが主張する本件各家屋の維持管理の状況や賃借人の募集の状況等の諸事情を考慮したとしても、賃貸割合の算出上、本件各独立部分が「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当するものと認めることはできない。●平成29年5月11日大阪高裁判決
5ヵ月間空室の部屋は、継続的に賃貸されてきたが一時的に空室であると主張するには長すぎるものであり、「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当するものと認めることはできない。このように最近の判決等では、相続開始時点で空室だったものについて、国税庁の質疑応答事例に示すようにかなりの短期間(現時点では4ヵ月程度)の空室でなければ認めないようです。