相続税の節税対策は、コツコツと生前贈与をしていくことが基本です。贈与税の基礎控除が110万円ですので、年間110万円以内の生前贈与であれば贈与税はゼロで財産を移転できます。これを10年間繰り返せばトータルで1,100万円、子供や孫が4人いれば4,400万円もの財産を贈与税ゼロで移転できます。
しかし、この生前贈与では10年スパンの時間が必要となることから、ご両親が高齢の場合には短期間でできる相続税対策を実施する必要があります。その一つがタワーマンションを使った節税手法です。
預金・証券で1億円残してしまうと相続税評価額はまったく圧縮することはできず1億円が評価額となりますが、この1億円の預金・証券でタワーマンションを購入して相続税評価額の圧縮を図るのがポイントです。
- 預金・証券でタワーマンションを購入するとなぜ相続税の節税対策になるのでしょうか。また、タワーマンションを購入するときの注意点を教えて下さい。
- 預金・証券でタワーマンションを購入するとなぜ相続税の節税対策になるのかというと、タワーマンションの建物部分は固定資産税評価額で評価し、土地部分は路線価で評価しますが、タワーマンションの場合は土地に対する持分が少ないため、土地の評価額が極めて少額となります。また、このタワーマンションを賃貸に供すると、建物は30%評価減となり、土地も貸家建付地としておおむね18%~21%評価減となります。
では、具体的にどの程度相続税評価額が圧縮できるのか、新宿区と港区の実例でご紹介いたします。
<新宿区>29階 物件価格1億4600万円 建物評価額1400万円、土地評価額1000万円 計2400万円(圧縮率16%)
<港区>23階 物件価格9680万円 建物評価額1300万円、土地評価額1400万円 計2700万円(圧縮率27%)
最近、タワーマンションを活用した相続税対策の話題となっており、上記の圧縮率の効果ばかり強調されていますが、この手法を否認し、相続税評価額は購入金額であるとした判例があります。
<概要>
●時系列 昭和62年10月マンション購入(7億5850万円)
昭和62年12月相続
昭和63年4月マンション売却(7億4000万円)
●相続人はこのマンションを評価通達で評価した1億3170万円で相続税申告を行った(評価額の圧縮は6億2680万円)が、課税庁は本件マンション購入の経緯等に照らすと本件マンションの購入は評価基本通達により評価したマンションの評価額と購入金額との差額を利用して、相続税の負担の軽減を図ることを目的としたものであり、このような場合には評価基本通達によらないことが正当として是認される特別の事情があるものとして、本件マンションの評価額は、評価通達の定めによらず、その客観的交換価値に相当する本件マンションの購入価額7億5850万円によるべきものとし、最高裁もこの考えを支持し、納税者の考えを否認している。このように、相続直前でのタワーマンションの購入、および相続直後の売却を目的としたものは税務否認される可能性が高いことに注意が必要です。